医療情報をクラウドFAXで扱う前に|認証・保存・委託・責任分界の確認項目
医療FAXは、機能の確認と利用開始の判断を分ける
医療情報をクラウドFAXで扱う前には、文書の経路、利用者の認証、保存・削除、委託先、障害時の役割を医療機関と事業者で確認します。MFAや暗号化の機能があることから、そのまま実医療情報を取り込めるとは判断できません。
2026年10月15日時点で、厚生労働省は医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版と関連Q&A・チェックリストを公開しています。本記事はその全要件の判定表ではなく、FAXの導入担当者が打ち合わせで整理するための確認項目です。実際の適用は利用目的とシステム全体で確認します。
1. 受信から閲覧・連携まで、情報の通り道を描く
同じ「FAX受信」でも、原本を管理画面で読むだけか、PDFをメール添付するか、OCR処理へ渡すかで保存先が変わります。まず、扱う文書の種類と用途を決め、次の経路を書き出します。
- 受信:電話回線と受信サービスの境界。
- 保管:原本PDF、管理用データ、バックアップ。
- 通知:宛先、本文、添付の有無、外部転送。
- 閲覧:担当者の端末、ダウンロード後の保存先。
- 追加処理:OCR、文書解析、他システムへの受け渡し。
例えば、メールで受信を知らせるだけなら原本をメールボックスへ複製せずに済みますが、件名や本文に患者情報を入れると別の持ち出しが生じます。通知のみ運用では、添付だけでなく本文・宛先・転送設定も確認します。設定の考え方はFAXのメール転送と通知のガイドを参照してください。
2. 認証・保存・委託について、確認結果を残す
厚労省の第7.0版システム運用編では、責任分界、情報管理、バックアップ、認証・認可、証跡のレビューなどを扱っています。FAXの導入準備では、次のように自社の運用へ落とし込みます。
表は横にスクロールできます。
| 領域 | 質問すること | 確認に使う資料・記録 |
|---|---|---|
| 認証・権限 | 個人別ID、MFA、復旧、退職時失効をどう運用するか。 | 適用対象者、権限表、復旧手順、架空データの受入結果 |
| 文書・通知 | 誰が閲覧でき、どこへ複製されるか。 | データフロー、通知内容、端末と転送先の運用ルール |
| 保存・削除 | 原本、OCR結果、ログ、バックアップをいつ削除するか。 | 媒体別の保存条件、削除時期、契約終了時の返却・消去条件 |
| 委託・OCR | 保存先と処理先はどこか。再委託先が何を扱うか。 | 委託先一覧、処理場所、契約上の取扱条件と変更時の連絡方法 |
| 監査 | どの操作を誰まで追えて、どの記録を取得できるか。 | イベント一覧、出力例、保持・保全方法、対象外の明示 |
| 障害・事故 | 誰が連絡し、何を止め、どう業務を続けるか。 | 責任分界、連絡先、BCP、訓練記録、再開条件 |
この表は当社の整理例です。法定保存期間を一律に指定するものではありません。扱う文書ごとの保存要件と、サービス内の削除・バックアップ保持条件を照合してください。
3. 国内保存と、OCRの処理場所を分けて確認する
原本を国内に保存していても、OCRで別の外部サービスに送る構成なら、その処理経路と条件を確認する必要があります。「国内のストレージを利用」という説明だけでは、すべての処理が国内で行われるとは分かりません。
原本・抽出結果をどのサービスへ渡すか、処理場所、保存・学習利用等の契約条件、利用する機能の適用範囲を確認します。条件が未確認の機能は実医療情報を使う検証から外し、架空データでの検証と分けて進めます。
OCRの精度や速度を評価する際も、必要なデータ取扱条件を先に整理します。モデルの比較とデータ取扱の確認は別の評価項目です。
4. 事業者と医療機関の担当を、通常時と非常時で決める
「事業者側で対応する」とだけ記載すると、通知先の更新や利用者の停止などが宙に浮きます。例えば次の担当を決め、委託契約や運用手順と一致させます。
- 医療機関:扱う文書と利用者の決定、端末・共有先の管理、院内の連絡と代替業務。
- サービス事業者:契約範囲のシステム対策、運用監視、障害情報と調査に必要な情報の提供。
- 双方で合意:事故連絡、証跡の取得、停止・再開の判断、返却・削除、他サービスとの境界。
この分担は検討のたたき台です。医療機関、連携事業者、サービス事業者の実際の役割に合わせて確定します。厚労省の企画管理編なども参照し、関係者の合意を残してください。
SP-FAXの技術受入と、実医療情報の利用条件
SP-FAXの医療・機密情報向けプロファイルは、エンタープライズ向けに提供する機能で、全利用者MFA、受信メールの通知のみ運用、OCR処理場所の制限、保存期限・削除制御をまとめて適用します。非実データの専用環境で技術受入に合格した状態と、実医療情報で利用を開始できる状態を分けています。
実医療情報の利用は、契約条件、責任分界、保存・削除条件、委託先と運用体制を確認し、当社責任者が承認した契約組織に限定します。この機能だけで厚労省ガイドラインへの包括的な適合を保証するものではありません。医療情報ASP・SaaS認定の取得を表明するものでもありません。
また、SP-FAXのASPIC認定は通常ASP・SaaS区分で、AI OCRは対象外です。認定を実医療情報の利用許可へ読み替えず、認定の対象範囲の確認方法も合わせて確認してください。
現行の機能と制約はセキュリティと信頼性で公開しています。監査ログの保全とFAX原本の削除不能バックアップにも違いがあるため、原本と監査ログの保全を併せて照合します。
5. 架空データの試用から、合意した開始条件へ
- 文書の種類と用途を決め、経路と必要な条件を整理する。
- 架空データで認証、通知、閲覧、削除、記録の確認を行う。
- 未確認項目、対象外機能、契約と運用の担当を確定する。
- 対象組織・利用者・機能を決め、双方の開始判定を記録する。
最初の問い合わせに患者情報や原本を添付する必要はありません。文書の種類、利用人数の目安、必要な保存・認証条件から相談できます。
よくある質問
MFAがあれば医療情報を使えますか?
認証だけでは判断できません。保存・削除、委託、監査、契約と運用体制を含めて確認します。
一般の申込だけでSP-FAXへ実医療情報を送ってよいですか?
医療用途は事前相談と対象組織ごとの利用開始判定が必要です。条件が整うまでは架空データで確認してください。
FAX原本をクラウド保存すれば、別の保存要件も満たしますか?
自動的には判断できません。文書ごとの要件と利用目的を確認し、元の保存業務を置き換えられるかを別に評価します。
医療情報を送る前に、利用条件をご相談ください
文書の種類と必要な条件を整理したうえで、医療・機密情報向けの提供範囲を確認します。患者情報を含む文書の添付はお控えください。